なぜ不動産競売に相続絡みの案件が多いのか
2021年11月15日
なぜ不動産競売に相続絡みの案件が多いのか
★なぜ不動産競売に相続絡みの案件が多いのか
かつて反社会的勢力が巣食っていたこともあった
不動産競売は、民事執行法の度重なる改正により、
オープンな市場に変わりました。情報公開も進んでおり、
全国の裁判所で行われている競売の情報をインターネットで
手に入れることができます。その中には普通の
不動産業者では扱っていないような物件も珍しくありません。
その一因として、次のような相続絡みの案件が
たびたび発生することが挙げられます。
①不動産競売とは
「住宅ローン」や「不動産投資ローン」を組むとき、
多くの場合、購入する物件を担保に入れます。
担保とは、お金を返せなくなったときに売却して
返済に充てるためのものです。ここまでは何となく
イメージできるのではないでしょうか。
不動産競売とは、この「売却する(売り払う)」
という行為を法的に有効な形にする制度です。
具体的には金融機関などの債権者が裁判所に申し立て、
裁判所が、差し押さえた不動産を買う人を募集し
売却する手続きを行います。買い手として名乗りをあげる人は
一定の期間に買いたい金額を提示(入札)し、
最高額を入札した人が手に入れることになります。
不動産の購入代金は裁判所に支払われ、
最終的に金融機関のもとに届きます。
ほとんどの場合、返済に必要な金額には足りません。
残ったローンは基本的にコツコツ返していくことになります。
②相続でもめて競売になるパターン
上記のような担保にもとづく申し立てが最も一般的ですが、
競売には他のパターンもあります。
その一つは相続です。相続人たちが分割方法でもめてしまい、
裁判で争ったときを想定してください。
このような場面では売却してお金に変え、
配分することを裁判所が決定することがあります。
売却は必ずしも競売による必要はないのですが、
そのためには全員の合意が必要です。
もし一人でも反対すれば売ることはできません。
そこを裁判所の力で実行に移すのが競売というわけです。
入札を検討する人に向けて公表される物件明細書、
現況調査報告書及び評価書の3点セットには、
「相続でもめた案件です」とはもちろん書かれていません。
買う人にとってはあまり関係ないからです。
担保にもとづく競売を担保不動産競売というのに対し、
このように裁判上の争いを解決するための
競売を形式的競売といいます。
③相続人の借金がもとで競売にかけられるパターン
担保不動産競売と形式的競売の他に、
強制競売という方式があります。
これは公正証書で契約した借金の返済や、
裁判で確定した支払いを実行するために、
裁判所が差し押さえた財産を売却する方法です。
強制競売の中には、相続によって取得した不動産が
対象となることがあります。例えば無職で
借金だらけのAさんが、亡くなった親の畑を相続したとします。
お金を貸している人がそのことを知り、
裁判所に申し立ててこの畑を差し押さえて
競売にかけ、返済に充てるというわけです。
いろいろな3点セットを見ていると、
共有の建物やどう利用してよいか分からないような
狭い土地など、不動産会社では
お目にかかれないような物件を目にすることがあります。
これらのうちいくつかは相続が絡んだ案件である
可能性が多分にあります。
④相続対策をしっかりしよう
競売はデメリットの多い売却方法です。
売却価格は通常よりも低くなるのが一般的で、
売れ残ることもあります。
買い手を選ぶことはできず、
売却決定までには長い時間がかかります。
しっかり相続対策をしていれば、
不動産会社を通じて有利な価格と
スピードで売却できる可能性があります。
例えば相続人同士がもめないよう、
被相続人が生前に遺産の分け方について話し合うことや、
財産を整理し遺言書を作成しておくなどすることで、
競売を避けることができるでしょう。
元気なうちに準備をしておけば、
より安心してシニアライフを送れる
可能性は高くなります。
不動産の相続はトラブルになりやすいものです。
住宅や土地、マンションなどを所有し、
子供など相続人になり得る家族が複数人いる人は、
何らかの相続対策をしておくに越したことはないでしょう。